dimanche 13 janvier 2008

金子光晴 『絶望の精神史』


『上海も、ロンドンも、ローマも、いまでは、おなじように箱を並べた様な団地住宅が建って、おなじような設計の狭い部屋で、コカコーラと、スパゲッティと、サンドウィッチで暮らす様になる。世界は、似てくる。これをデモクラシーというのであろうか。
  同時に、ばらばらになってゆく個人個人は、そのよそよそしさに耐えられなくなるだろう。そして、彼らは、何か信仰するもの、命令するものをさがすことによって、その孤立の苦しみから逃避しようとする。
  世界的なこの傾向は、やがて、若くしてゆきくれた、日本の十代、二十代をとらえるだろう。そのとき、戦争の苦しみも、戦後の悩みも知らない、また、一度も絶望をした覚えの無い彼らが、はたして何を見つけ出すだろうか。』

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